前回はアンケートを取ったので、お休みにしたのですが、 そのせいか今回は枚数が少なかったです。 でも、熱心に書いてくれる人がいて、とても嬉しいです。
以下に質問の内容と共に皆さんの意見感想を書きました。 ホームページで公開不可、としたものは無かったので、 全員掲載しました。 (掲載に関して間違っていたら至急連絡して下さい。) 下線の上に私の回答があります。
ここでいい最近はめっきり人が減ったので、 今使っている部屋がちょうど良い様です。 部屋を変えると、連絡するのが大変だし、 おそらく混乱するので、しばらく今の所で続けようと思います。
今回の授業ではカノニカル分布があったと思いますが、 大丈夫だったのでしょうか。 物理学科を卒業された方なら、おそらく大丈夫だと思うのですが、 そうでない方は、ちょっときついかもしれません。 この項目はしばらく残すので、もしあったら書いて下さい。
久保、第1種FDTの具体例やはり具体例は、人気がありますね。 次回は輸送方程式の具体例をやって、 時間反転は、具体例をちょこちょこやって、 その後の相反定理は、1日具体例に時間を割こうと思っています。
はっきり最初に書いたのが良かったのでしょうか。 しかし、 後で書くようにランジュバン方程式との関係をあいまいにしたところが、 失敗でした。
- 輸送方程式の形
「P(x,t)をf(t)で展開する」というところ.
これも具体例で説明すれば、よかったのでしょうか。 一般にもし、時間おくれがなければ、P(x,t)はf(t)の普通の関数になるので、 単にテーラー展開すれば、良いです。 時間おくれがある場合には、現在の時間tだけではなくて、 過去の時間t'のf(t')にP(x,t)がよります。 この場合は単に、P(x,t)はf(t)の関数ではなくて、 汎関数という言い方をします。 しかし、f(t)でテーラー展開できるのは同じ事で、 ただ展開する微少な量がf(t)だけではなくて、 以前の時間のf(t')等、全ての時間のf(t)になるだけです。
いずれにしろ、ここはもう少し時間をかけて説明すべきでした。 済みません。
- 久保公式のフーリエ変換がなぜ出来たのか聞きのがしてしまいました。 α''ω=ωβψω/2がどんな役割を 果たしたのですか?
- 久保公式の仮定で出てきた「温度差・濃度差」とは 何の温度差、濃度差ですか?
- 輸送方程式の説明ででてきた、"全体の形はおよそ良い"というのは、 本質的な振る舞いが見えるということですか?
- 輸送方程式のLは、ランジュバン方程式のLとは別物ということですか。
久保公式のフーリエ変換は出来ません。 ただ、感受率と相関関数のフーリエ変換との関係は、 α''ω=ωβψω/2となるといえるだけです。 その辺の関係をもっとゆっくり説明すれば良かったですね。 すみません。 そもそもα''ω=ωβψω/2の導出を 授業でやった方が、良かったかもしれません。 宿題にしてしまうと、授業で扱う内容に偏りがある感じになります。
温度差・濃度差の説明をしていませんでした。 申し分けありません。 温度差というのは、例えば箱があって、 右と左で温度が違う時熱の流れがおこります。 これは、熱の流れに対して温度差が外場の様に考えることが出来るので、 線形応答の式をたてることが出来ます。 つまり、熱の流れをJ(t)、温度差をΔT(t)とすれば、時間おくれがあれば、
J(t)=∫t-∞α(t-t')ΔT(t')と書ける訳です。 濃度差についても全く同じで、ビーカーに何か砂糖の様なものを溶かした時、 右と左で濃度を変える事が出来ると、砂糖の流れが起きます。 その流れについて線形応答の式をたてることが出来て、 その時濃度差が外場に様に考えられます。 ところが、温度差にしても、濃度差にしても、 久保公式の仮定3が満たされないので、 厳密な意味では久保公式は成り立たないということになります。
授業では輸送方程式は、 ランジュバン方程式のランダム力を無視したものとして、 導入しました。 ランダム力があるのとないのとでは、 数学的にはかなり違うのですが、 結果的にある条件を満たしていれば、それほど違いません。 「全体の形はおよそ良い」というのはそのことが言いたかったのです。 つまり、平衡の値から随分離れたところでは、 ランダム力による揺らぎが多少重なりますが、 だいたい輸送方程式と同じになります。 だいたいという意味は、落ちていく速度とか、平衡値に落ち着く時間は、 輸送方程式とランジュバン方程式で変らないということです。 ランジュバン方程式でランダム力の効果に興味がなければ、 「本質的に」輸送方程式でも構わないということになります。
輸送方程式とランジュバン方程式の関係についても、質問が出て、 それについて答えているうちに余計に混乱を招いていたようです。 どうも申し分けありませんでした。 やはり、質問に対する答えはあらかじめ準備していないので、 うまく答えられない事が多いです。 分かりやすく答えられる様、今後の検討課題です。 しかし、だからといって質問は困る訳ではなくて、 1番困るのは、分からないまま進んでいくことですから、 どんどん質問してもらって結構です。
いずれにしろ、授業で輸送方程式と呼んでいるものが、 多くの現象を記述することは確かです。 しかし、 それを微視的な観点できっちり説明した人はまだいないと思われます。 したがって、 授業でやったように輸送方程式がブラウン運動の理論から導出できるのか、 それとも違う立場があるのか、 はっきりしないのが本当のところだと思います。 今のところは、 「ブラウン運動の理論から導出できる」というのは1つの仮定で、 それがオンサーガーの仮定と呼ばれているものです。 オンサーガーの仮定が成り立てば、もちろんL=D/2ですが、 成り立たなければ、L≠D/2ということになります。 いずれにしろ、Lの値やS(x)の関数形がどうなるかに目をつぶれば、 オンサーガーの仮定が成り立つかどうかは、重要ではなくなります。 この事は次回の授業の冒頭でもう1度説明しますので、 皆さん授業に遅れずに来ましょう。