質問と回答 (採点対象)

第9回 (12月6日)

この授業は質問を採点の対象にしています。 詳しくは、 ガイダンス P6を見て下さい。

ようやく12月6日まで回答したました。 遅くて申し訳ありません。

ホームページで公開不可、とは書いてなかったものを、掲載しました。 (掲載に関して間違っていたら至急連絡して下さい。) 下線の上は私の回答です。 また、提出したのに、載っていない人は、 連絡して下さい。 採点されていない可能性があります。


質問 1. (採点結果: 24点)

丸1 ノート 9 P3 丸 2 の 5 行目、"f0 は定数なので、 両方とも定常過程になる。" とありますが、外場がある場合は、 時間の原点をどこにとっても良いわけではないと思われますが、 正しいのですか?

これはもっともな質問で、本当はもっと詳しく説明したかったのですが、 時間がなくてごまかしてしまった部分です。

全体で見れば、質問で書かれた通り、定常ではありません。 例えば、分布関数は時刻を1つしか含まないので、もし定常であれば定数になりますが、 外場のある場合はそうではありません。 しかし、遷移確率だけを考えると話は違ってきます。 遷移確率は、定義から初期の分布によりません。 t = 0 でどんな分布をしていても、遷移確率は同じなのです。 そこで、t = 0 で外場が f0 の時の平衡分布になっている場合を考えます。 その設定は、授業で考えたとは違います。 t = 0 が平衡分布の場合は、定常過程なので、遷移確率は、2つの時間の差でかけるのです。 そうして得られた遷移確率は、t = 0 が平衡分布でない場合でも同じ形になります。

ちょっと分かり難いかも知れませんが、 もし時間があれば、部屋まで聞きに来て下さい。


丸2 今回の証明は、仮定 4 の形で E = E0-xf とかける事が、すべてである感じがします。 この仮定の妥当性はあるのですか? 線形応答と関係づけたいからという理由で理解しても良いのでしょうか。

仮定の妥当性ですが、結局、例を1つしかやらなかったので、 よく分からない勝ったと思います。 少なくともレーザーにトラップされたコロイド粒子の場合は、 成り立つ事を授業で説明しました。 その他、成り立つ例は多くありますが、もちろん成り立たない場合もあります。 例えば、考えている系の両端を違う温度にすると、 応答として、熱の流れがおきますが、温度差が時間変化すると、時間遅れがおきます。 しかしこの場合、温度差を外場と考えると、E の中には含まれません。 同じような例として濃度差を外場にする場合も仮定を満たしません。

それから、この仮定が「すべて」というわけではなく、仮定 2 と 3 も大事です。


丸3 2nd FDT と見比べて、久保公式 α(t)=-βd<X(t)X(0)>/dt
α(t)・kBT = d<X(t)X(0)>/dt と、アインシュタインの関係式
λ・kBT = D/2 より
d<X(t)X(0)>/dt ---> D/2
α(t) ---> λ
のように見えます。 つまり、平衡系で、ゆらぎの相関(=<X(t)X(0)>) の時間変化が定数 すなわち、ゆらぎの時間変化が t に比例し、 かつ外場の応答が定数のとき、 久保公式は 2nd FDT と等価であると思って良いですか?

この点も、時間がなくて説明できなかったので、質問して頂いてうれしいです。 それにしても、良い点に気がつかれましたね。 久保公式は、第1種揺動散逸定理と呼ばれる事があるくらいで、 第2種揺動散逸定理と密接な関係にあります。

実はアインシュタインの関係式は、 第1種の応答がデルタ関数的な場合、 つまり時間遅れがない場合に相当します。 D とは何だったか思い出して下さい。 ランダム力の時間相関関数をデルタ関数と思ったときの係数でした。 一方、ランジュバン方程式の速度に比例する抵抗の項を、 同時刻の速度ではなく、 以前の速度に比例するという形にわざわざ書き換えます。 そうして、時間遅れのあるように λ(t) というものを導入して、 元々の時間遅れのない式に対応させると、 λ(t) = 2λδ(t) になります。 アインシュタインの関係式の両辺に2かけるデルタ関数をかけると、 2λδ(t)kBT = Dδ(t) となります。

この式は、時間遅れのない場合を表していますが、 実は、時間遅れがある場合にも拡張できます。 その場合は、λ(t)kBT = <R(t)R(0)> となるのです。 つまり、
d<X(t)X(0)>/dt ---> <R(t)R(0)>
α(t) ---> λ(t)
という対応があって、 アインシュタインの関係式は、 時間遅れのない場合の特別な場合という事です。


丸4 仮定 3 について、外場をかけて、非平衡状態であっても、 平衡の近傍であれば、 平衡状態の方が安定であるという仮定が暗に含まれていると思うのですが、 正しいですか?

説明の時に、緩和するグラフを書いたのがいけなかったかも知れません。 緩和しない系でも久保公式は、成り立ちます。 例えば、階段状の外場をかけると、充分時間が経てば、 x が一定の値になるように授業では説明しましたが、 久保公式の証明にはそのことは使っていません。 仮定 3 は、平衡状態の存在とその形についての仮定であって、 系が必ず平衡状態になるという事は仮定しないのです。 これは、良く間違える点なので注意して下さい。 研究者の中でも間違っている人が時々います。

採点ですが、3-4の目標は、4つありますが、3-3の積み残しがあるので、1つ 20 点になります。 丸1は 3-4の 3 つ目の目標と関係していて、5 点で、丸2と丸4が 4 つ目と関係していて、あわせて14点、丸3は、1 番目の目標をほぼ満たしていると思われるので、満点の 20 点です。 ただし、締め切りを越えているので、 0.6倍の24点です。


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