動的密度汎関数法の分子液体への拡張(相互作用点モデル)

動的密度汎関数法は、空間スケ−ルにして1-20オングストローム、 時間にして1-100psの凝縮系の動力学を記述する基礎方程式の、 最有力候補です。 それより小さい速い微視的なスケ−ルはニュートン方程式が、 その逆の巨視的スケ−ルは流体力学方程式が、 基礎方程式になる事が知られています。 しかしながら、その間のスケ−ルは、凝縮相では見つかっていません。 動的密度汎関数法は、その間をうめる方程式として期待されています。 ちなみに、希薄気体ではボルツマン方程式がその役目を果たしています。

本当に動的密度汎関数法が基礎方程式になり得るかどうかを調べるのは、 その微視的な導出を詳細に検討するだけでなく、 計算結果を実験と比較することが何より大切です。 幸いにも分光学的な実験技術が発展し、様々な現象に対して、 理論と比較するのに充分な定量的な実験が多く成されています。 しかしこれらは、いずれも分子液体が使われています。

動的密度汎関数は、古典液体におもに応用されているのですが、 これまで、ほとんど単純液体でしか研究されていませんでした。 実験と比較するためには、どうしても分子液体への拡張が必要となります。

分子液体の理論は、平衡系で詳しく調べられてきました。 より精密な近似を構成できる方法としては、 回転不変という関数で展開するのがありましたが、 簡単な分子しか適応出来ません。 それに対して、相互作用点モデルを使った分子液体の理論は、 RISMという名前で呼ばれ、近年多くの応用がなされています。

そこで、動的密度汎関数法の相互作用点モデルへの拡張は、 実験と比較する上で大変有用です。 現在、基礎方程式は定式化出来ましたが、 それが従来の単純液体のものと比べ、どういう性質を持っているかを、 明らかにしなければなりません。 その上で、実験結果をどれくらい再現するかを調べようと思っています。

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