2005年 |
1月 2日 |
山本 義隆 |
磁力と重力の発見 1、2、3
これは、「物理以外」ではないかもしれないが、
あまりにすごい本なので書いておく。
あまりにすごいので、山本義隆の他の本も読んでみたくなった。
日々の問題に追われていると、ついなぜ物理を研究するのか、
とか、なぜ物理を教えるのか、ということが分からなくなる。
時々は、そういうことを考えないと変な事しか研究できないし、
変な事しか教えられない。
物理学史は、そういうことを考えるための良い勉強になる。
というのは、物理の新しい流れや、物理そのものができる時、
まわりに同じことをしている人がいないのだから、
そういう問題を真剣に考えないとやっていけないからだ。
もう少し書いておくと、この本を読んで一番衝撃を受けたのは、
ニュートンはデカルトなどの機械論者と対立していたことだ。
ニュートンの新しさは、原因を追求することを止めたことらしい。
なぜ、力がとおくまで及ぶのかを考えるのを止め、
単に及び方を実験から数式で表した事が画期的だったようだ。
これは、今の我々の研究の姿勢に、
いろいろ問題を投げかけていると思う。
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2月 5日 |
安岡章太郎 |
果てもない道中記 下
「大菩薩峠」という小説は、私は、
いわゆる股旅物かそうでなければ剣豪小説かと思っていたら、
全然違うらしい。
映画の小津安二郎のような位置で、
一般の人よりもプロの小説家の間で好まれるものらしい。
「果てもない道中記」というのは、それについて書かれたものだが、
何とも不思議な感じがする。
小説とも評論とも言えないし、書評のようでもあるが、
良く新聞に載っているのより全然面白いし、敢えて言うなら随筆か。
「流離譚」を読んだ後では、小説の気分で読める。
そう言う意味ではこれは、新しい形式かもしれない。
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2月 6日ぐらい |
北中正和責任編集 |
「風都市伝説」-1970年代の街とロックの記憶から-
音楽評論家といわれている人の書く文章は、私は基本的に嫌いだ。
つまらない人が多い。
何かその音楽や音楽家と自分との個人的な関係を書き散らす文章が、
多いので辟易する。
その中でも北中正一さんは例外で、
客観的で読者が何を欲しているか、ちゃんとわかっている。
京大の理学部出身ということらしいが、
それと関係しているかもしれない。
この本はその北中正一さんの責任編集で、
日本のポピュラーソングの一つの流れが出来た時の記録だ。
「風都市」というのは、演奏家ではなくて、
マネージメントをする集団だが、
新しい流れが出来るときに重要な役割を果たしたようだ。
ただ、インタビュー集なので、
もう一つ「風都市」のすごさがわからなかった。
北中正一さんが一人で書いた方が良かったと思う。
それにしても、「風都市」の中心人物の人が、
現在、数学者として大学にいるというのが気になる。
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4月 6日 |
有吉佐和子 |
和宮様御留
この小説は、出だしがすごかった。
身分の低いフキという女の人の様子が本当に生き生きとしている。
物語とはこういうものかと思わせる出だしだ。
公家の言葉使いも聞こえてきそうなほど臨場感があった。
しかし、フキは最後、発狂して死んでしまうので、
自分の身になぞらえてつらかった。
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4月 23日 |
山本義隆 |
重力と力学的世界
漫画ばっかりだと、しょうがないんで、
山本義隆さんの本を並行して読んでいました。
ニュートンの時代では、デカルト対ニュートンの対立で、
最終的にはもちろんニュートンが勝ったのですが、
そのあと、「力学神話」が流布し、
結果的にはデカルトと似た思想が流行ったという流れの整理は、
「○○神話」が相対化できて、
今の考え方にも参考になると思います。
今は、「微視的(ミクロ)神話」
とでもいうべきものを信じている人がいると思うのですが、
私は、そういう考え方はこの本で言うデカルト的な気がします。
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6月 23日 |
開高健 |
二重壁・なまけもの
開高健の本は有名な割に読んだことがなかったのだが、
小説はあまり面白くなかった。
サントリーのコピーライターと聞いていたので、
それらしいものを期待していたのだが、その期待は応えられなかった。
ただ、エッセイはとても面白かった。
しかし、読んだものが悪いのかもしれないので、
講談社文庫以外でも探してみようと思う。
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8月 27日 |
開高健 |
ベトナム戦記(朝日文庫)
開高健がベトナム戦争の時に実際にベトナムに行ってまとめた本で、
歴史的にも有名らしい。
小説家が実際の戦場に行くなんて今では考えられないだろう。
感想は、前に読んだ開高健の小説より面白い。
ただ、ベトナム戦争よりも、戦争そのもの、戦争とは何か、
という普遍的な問いに対するルポタージュだった。
それはそれで充分価値があるが、ベトナム戦争について、
詳しく知るためには、戦場に行ってはいけないのだろうと思った。
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