可視化・疑似体験教材作成を支援するソフトウェア

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九大院理 凝縮系科学 凝縮系基礎論
桜井雅史

概要

物理や数学などにおいて、数式の持つ意味を直感的にイメージすることは、重要 で不可欠な能力である。特に物理では、「あるモデルの仕組みを表す方程式を立 てる」、「数式からモデルの様子をイメージする」などの場面は日常茶飯事であ り、物理を学ぶものにとって数式の扱い以上に必要とされる能力である。

従来の板書による授業スタイルでは、生徒にイメージをつかませるのに苦労が必 要である。例えば、時間変化するモデルの様子や、係数を変化させた時の応答を インタラクティブに体験するということは、黒板や教科書を使って容易には実現できず、 ちょっとした説明のために、実験や動画作成の準備に多大な労力と時間が必要である。

一方、近年はコンピューターの能力の発達によって、手軽にコンピューターを利用できるようになった。 さらに教育方面でも、コンピューターを使うことによって、数式を即座に計算したり、 動画や3次元的な図形を効果的に表示することができるため、単なるコンピューター利用の授業にとどまらず、 普通の授業等に教材として活用される場面も多くなってきた。 しかし、この場合も教育者、利用者共に十分な知識や準備を必要としたり、インストールやソフトウエア購入の 手間があるため、手軽に利用するということは難しい。

そこで、コンピューターを使って手軽に物理現象をアニメーションさせたり、インタラクティブに実演するような教材を手軽に作成できるシステムあれば大変便利にちがいない(あわよくば、いまの理系離れを何とかできるかもしれない。)と思い、作成を試みているところである。

教育支援ソフト?

具体的には、物理・数学の授業を想定して、教師の方が自分の授業で必要なアニ メーション、グラフ等の教材を、手軽に作成出来るようなソフトである。

ソフトウエアはSun Microsystems社の開発したオブジェクト指向言語Javaで作成 したため、Javaの動作可能な全てのコンピューターで使用することができ、また、 容易にインターネットのウェブページ上で公開することも出来る。この利点は単 に手軽に授業で実演して見せるという他に、生徒が後で自分で操作して体験する ことが可能であり、より一層の理解が期待できる。

初期段階

まず、実際に、どのような教材が必要とされているかを調べるために、試作教材を作り、平成11年度4月から物理学科1年生を対象に行われている新しい授業「物理学入門」(小田垣孝教授)にて実際に使って頂いた。現在はその効果や、問題点を洗い出し、汎用化へのフレームワークの整備を行っている。

途中経過報告

なお、試作した教材については現在インターネットで公開している。

研究終了:プロトタイプ完成

すべてやり遂げたわけではなく、まだまだ機能の追加や改良の余地はいくらでもあるが、とりあえず当初から計画していた「手軽に教材作成」を可能にするソフトのプロトタイプが出来たので、ここに公開し、今回の研究の成果とする。

プロトタイプ的完成品

報告書(PostScript)


試作教材について

今回試作したものは、基礎教育科目の「物理学入門」という名前で行われた、物理に必要な数学の導入を目的とした講義にしたがって作成した。開発を進めていく中で、大まかに下の4っつの分類が出来るように思われた。

以下はすべて画像です

単純グラフ表示

関数形の表示やパラメーターの変化、3次元グラフの表示など。

テーラー展開
テーラー展開の近似の確認


3dグラフ
ポテンシャルや鞍部の説明など

微分方程式

微分方程式の解や、運動方程式の発展の様子を、グラフ、アニメーションで表示させるなど。

減衰振動
減衰振動のグラフ表示


連成振動
連成振動のグラフ表示


ばね振動と重力振り子
ばね振動と重力振り子

単純アニメーション

説明の難しい運動をアニメーションを用いて説明する。

コリオリ力
コリオリ力のアニメーション

その他

今回は変分原理のイメージを示した。他の適用では、熱力学、統計力学の分子の動きをシミュレーションするなど。

変分原理の簡単なシミュレーション
変分原理の簡単なシミュレーション



桜井雅史: E-mail : m.sakurai@cmt.phys.kyushu-u.ac.jp
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