変革体験について絶望のそこにいる人が悩んだ末に、突然、何かの啓示を受けたような、 神秘的な体験をすることがあります。 この体験を、「生きがい」を無くしてしまった人が、そこから這い上がるための一つの過程と、 筆者は位置づけ、もっと広く「変革体験」と言っています。 つまり、「生きがい」を無くすほど苦しい体験をした人は、 今までと違う価値感、考え方になる必要があり、それが急激に起こる場合に、 その体験を「変革体験」と言うのです。 この本のすごい所は、この「変革体験」をいろいろな文献から集め、分類し、 その共通の特徴を取り出す事です。 自然との融合体験宗教的変革体験変革体験の特徴変革体験の意味「変革体験」を自然との融合や宗教との関連で議論し、その共通の性質を見た後で、 「変革体験」と「生きがい」との関係を考えます。 そして、結局 「変革体験」の説明にある「急激に起こる」という部分はあまり大事ではなく、 むしろ「変革体験」をした後、 本当の意味での価値観の変化があるかどうかが問題だという結論になります。 生きているうちで大事な事は、変化が「急激に起こる」ことではなくて、 もっと地味に毎日の生活を誠実に暮らす事でしょう。 したがって「価値観の変化」が重要というわけですが、 どのように変化するかも言及されていて、 新しい価値観はどんな人でも平等に共有できるものだという事が、 最後に死刑囚の告白により説明されています。 すべての生物と心を通わせる事、深く考える事、自然を細かく味あう事、創造する事、 これらを喜びと感じ「生きがい」とする価値観こそ、苦しみや悲しみを経た後で、 新たに手に入れるものなのです。 |