いよいよこの本のメインの部分に入っていきます。 つまり、生きがいを失った人たちが新しい生きがいを得るまでの期間、 絶望の中から希望を見いだすまでの過程の分析です。 最初は、自殺に対する考察で、主に自殺をどう回避するのかが書かれています。 自殺を防ぐもっとも単純でもっとも強力なものは、肉体です。 死ぬのが怖いと思う最大の原因は、肉体の痛みが伴うからで、死ぬのがいたくなければ、 死ぬ人がもっと増え、人類は滅亡するかも知れません。 さらに、何が起こっても、とりあえず食事は取らないといけないし、 たとえ不眠症になってもいつかは必ず眠ります。 当たり前の事ですが、その事が絶望から人間を救うと言っても言い過ぎではありません。 自殺をふみとどまらせるものウイリアム・ジェイムズによる 3つの点を挙げています。
運命の反抗から受容へ生きがいを失った人は、まず自棄になります。 著者によると、自棄になると、時間を信用できなくなるそうです。 一般的に言えば、時間が経てば事態は好転し、 一時的にうまくいかない事もうまくいくようになるはずですが、 時間を信用しない人たちは、そう思えないわけです。 いくら待っても決して事態は好転しないし、うまくいくときはもう来ない、と思うわけです。したがって、何かとても苦しい事にぶつかって、立ち上がれないときは、 まず時間を取り戻す事が大事です。 とりあえず、時間を信用してみる事が第1歩です。 つまり耐えるという事です。 耐える事から始めようというわけです。 しかし、耐えてようやく普通の人と同じ時間を取り戻せるのならば、 耐える分だけ普通の人より損をしているのではないかという疑問が起こります。 その答えは、前節の「苦悩の意味」と同じで、耐える事に意味があるというものです。 耐える事によって得られるものが必ずあるという事です。 悲しみとの融和作者は、悲しみこそもっとも深刻で、 もっとも最初に越えなければならない壁だと思っているようです。 そしてその具体的な処方箋をパールバックを引用しながら挙げています。
肉体との融和この項目は、主に病気にかかった人のことですが、 たとえ肉体がどんな状態にあったとしても、精神は独立した価値がある、 ということをきちんと理解出来るかどうかが鍵のようです。 健康な人であってもなかなか、精神と肉体の関係を正しく理解するのは難しいのですが、 しかし、病気の人であればなおさら、それを理解するしかありません。 過去との対決生きがいを失った人にとっては、 以前の楽しかった記憶は現在の苦しみを大きくする効果しかありません。 失恋をしたり、愛する人と死に別れた場合は、特にそうです。 確かに現在は過去より不幸かもしれません。 しかし、その不幸を体験したことで、他人の役に立ったり、新しい何かが生まれることも、 確かにあるのです。 死との融和価値体系の変革生きがいを新しくするためには、それまでの価値観を捨て、 新しい価値観をつくらなければなりません。 苦しいと思う原因は、それまでの価値観にあるのです。 自分に生きている価値がないと思う時がとても苦しい時です。 もしどんな人間でも生きている価値があるのならば、 その価値を見つけるための新しい価値観が必要です。 はじき出された人の行方時間の軸の上で生きがいをなくした人、生きがいをなくすほど苦しい思いをした人は、 自分の一生はもうこれでお仕舞い、後は「余生」だと感じます。 そうなってしまうと、目的のある時間を過ごすことが出来ません。 時間に意味がなくなって、内容のない空っぽのものになります。 時間を過ごすというよりもつぶすという表現の方がぴったりします。 しかし、このような辛い状態にいつまでもいられません。 やがて、時間と戦うようになります。 空間の広がりの中で自然のなかで生きがいを失った人は、新しい生きがいを見つけない限り、どこに行っても居場所がありません。 居場所とは、その社会にとけ込み、その社会の価値観の中で自分を位置づけることが出来て、 初めて得られるものです。 したがって、生きる目的をなくしてしまった人は、自分の新しい価値観がつくれない以上、 社会に自分を位置づけることが出来ず、いつもふわふわと浮いたような、 落ち着かない感じになります。 そんな場合に、助けてくれるのが、「自然」です。 「自然」は、どんな場合でも、どんな状況でも、いつも必ず受け入れてくれます。 生きがいを失って、まだ新しい生きがいを探せないでいるとき、 その苦しいときは、 美しい風景やありふれた空や、そして普通の草や木でも、 気持ちが安らぎます。 特にこれは本に書いてあることではありませんが、空を見上げるのは効果があります。 気分が落ち込んでいると、地面ばかり見てしまいますが、 そんなときに空を見ると、とても良いです。 |