• 日時:2013年9月10日(火) 13:30~
  • 場所:物性理論セミナー室(R2635)
  • 講演者:藤橋 裕太 氏
  • 概要

    光合成アンテナ系タンパク質内で捕獲した光エネルギーはクロロフィル(Chl)間の励起移動によ って反応中心蛋白質に効率よく伝達される。アンテナ系内での励起移動機構は Chl 間の励起移動 相互作用の大きさ V Chl-タンパク質間の相互作用の大きさλによって決まる。λ>>V、λ<<V の場合の励起移動はそれぞれ V を摂動とする Förster 理論、λを摂動とする Redfield 理論で記述 することができる。しかし、アンテナ系内ではこれらの相互作用が拮抗する場合がある。最近、 McCutcheon Nazir は幅広いパラメーター領域で励起移動のダイナミクスを適切に記述できる 理論(MN 理論と呼ぶ)を構築した。彼らは変分パラメーターを含んだ摂動項を導入した。この摂 動項の大きさは Förster 極限、および Redfield 極限でそれぞれ V、およびλに一致するようにな っている。変分パラメーターは Bogoliubov 不等式を基に自由エネルギー最小化を要請すること で決定される。彼らの理論は Förster 極限、Redfield 極限では定量的に励起移動を記述できるが、 V とλが拮抗する場合の励起移動速度はシミュレーションによる厳密解からずれている。
    我々は
    MN 理論を改良するために、Decoster によって導出された Second Bogoliubov 不等式 を用いて変分パラメーターを決めた。その結果、MN 理論よりも V とλが拮抗する場合の励起移 動速度を定性的に良く記述できることを示した。
    本講演では、最初に化学反応、電子移動、励起移動の概要について説明し、我々が構築した励 起移動理論について発表する。次にアンテナ系-反応中心複合体である光化学系
    II の励起子状態 を我々の理論を基に解析した研究について発表する。