• 講演者:藤原 慎吾氏(九州大学院・理・化学専攻)
  • 日時:3月6日(木)13:30より
  • 場所:九州大学箱崎キャンパス理学部2号館6階2635室
  • 概要:酸性タンパク質分子は負の電荷を帯びた巨大分子(マクロアニオン)である。Zhangらは実験により溶液中の多価カチオン濃度の増加に伴う酸性タンパク質のReentrantな凝集分散挙動を報告している[1]。一方で秋山らは理論的なアプローチによりマクロアニオン間引力の電解質濃度依存性を計算し、実験を再現するReentrantなふるまいを再現している[2]。しかし、この機構に関する理解は十分とは言い難い。特にマクロアニオン間引力の消失に関しては十分な解析が行われていない。そこでこの挙動を積分方程式理論を用いて解析した。溶媒分子には剛体球モデルを、カチオン, アニオン,マクロアニオンについては荷電剛体球モデルを用いた。HNC(Hypernetted Chain closure)-OZ(Ornstein Zernike integral equation)理論を用いて各粒子間の相関関数を算出した。また、同理論を用いることでマクロアニオン-カチオン間の実効ポテンシャルは直接項と各成分ごとに分解できる。マクロアニオン間の実効引力はカチオンによって媒介されているので、マクロアニオン-カチオン間の実効ポテンシャルを使って上記のReentrantな挙動を議論することを考えた。
     解析の結果は次のようにまとめられる。当初、アニオンによる引力媒介カチオンの引き抜きが高濃度電解質領域での引力消失現象の原因であると考えていたが、カチオンによる間接効果も小さくないことが分かった。
  • 参考文献[1] F. Zhang, et al., Proteins Struct. Funct. Bioinf. 78, 3450 (2010). [2] R. Akiyama, et al., J. Phys. Soc. Jpn. 80, 123602 (2011).