2006年に読んだ本(物理以外、主に小説)


2002年以前に読んだ大江健三郎の小説
2003年と2004年に読んだ本
2005年に読んだ本
2つのスピカ
2006年 3月14日 瀬戸内晴美 かの子撩乱

瀬戸内晴美だ。 今は瀬戸内寂聴と名乗っているらしいが、 母親が好きだった小説家だ。 これから少し続けて読もうと思う。 ということで、岡本かの子だ。 これは標準的な伝記といえるが、 岡本かの子の存在自身がおそるべし。 常識というものについて考えさせてくれる。 人間は生きていると、必ず常識に反することをしてしまうと思うが、 常識に縛られているとそれがとても辛い時がある。 そんな時に読むと良いかも知れない。

4月 26日 瀬戸内晴美 京まんだら(上)

文章がすごく上手だとはいえないところがあり、 作品自身が初期の頃だと思うので、特に会話が素人くさい感じもしたが、 題材は、作者がこの小説を書く必然性がわかるものだった。 どうも瀬戸内晴美は、題材で勝負の人らしい。

5月 5日 川原泉 甲子園の空に笑え

実は最近 フィギュアスケート に凝っていて、この漫画も、収録されている 「銀のロマンチック、わはは」 というフィギュアスケートの漫画が良いと、すすめられて買った。 で、すすめてくれた人にとても感謝している。 素晴らしい漫画だった。 最近では「2つのスピカ」以来のヒットだ。 オリンピックのショートでスルツカヤがあんなにすごい演技が出来たのは、 もしかしたら病気のだったのかもしれないと思わせる漫画だった。 後、収録されている2つの漫画も、読んだが、川原泉、 なかなかすごい漫画家だと思った。

6月 13日 瀬戸内晴美 京まんだら(下)

長編小説は全部読み終わって、さらに時間が経つ方が良い様だ。 この小説も読んでいる途中の印象と読後の印象はまるで違う。 作者もそれは計算ずみなのだろうか。 とにかく、上巻を読み終わった時よりもずっと面白い。

7月 14日 瀬戸内晴美 花芯

この間、ある人にこのページを読んでくれていると、 ありがたい言葉を頂いたが、その人は月に 10冊以上読むらしい。 「京まんだら」を読み終わってから 1ヶ月以上経って次のを読み終わる私とは大違いだ。 というわけでここでは、「子宮作家」の「花芯」よりも 「いろ」についてだけ書いておく。 この短編は、他の小説と文体というか雰囲気がまるで違うように感じた。 私自身は瀬戸内晴美の文章は そんなに洗練されていると思っていなかったのだが、 この短編だけは、まるで森鴎外のような味わいがある。

8月 25日 瀬戸内晴美 百道

小説家が伝記を書く一つの方法として、 資料に資料を重ねて調べまくった上でノンフィクションのように、 書くのが流行っているのだろうか。 これも、その分類に入る伝記だ。 私はどちらかといえば、安岡章太郎の方が徹底している感じで好きだ。 もっとも、西行というのも難しいのかもしれない。 岡本かの子のような女性の方が得意なのかもしれない。

10月 1日 瀬戸内晴美 密と毒

作者は以前離婚歴があるそうで、いろいろな体験をしたのだと思うが、 この小説は、人に裏切られる寂しさがあまりリアルに書いてある。 聞くところによると、作者はどちらかといえば裏切る方だったらしいが、 裏切る方が裏切られる心情をよく理解できるということだろうか。 しかし、「作者は裏切る方」というのも、そんな単純じゃないのだろうけど。

10月 19日 九州大学文芸部 九大文学 Hervest Rain

また、文芸部の人にたくさん頂いたので、早速読ませて頂きました。 私の好きな人はもう卒業されておられないと聞いていたので、 「更紗未々」さんの名前を見つけたときは、小躍りしました。 本自体は、どの作品も相変わらず、水準の高い、 すばらしいものが多かったのですが、 編集後記にもあるように作品ごとに世界が全く違って、目が回りそうでした。 個人文集のようなもので、じっくり味わいたい気もしました。 ただ、その中でやはり、 「更紗未々」さんのは、たった1個の作品で十分味わえました。

11月 2日 九州大学文芸部 花霞のゆめ

この前に読ませて頂いた「Hervest Rain」は、ベスト盤だったみたいで、 九大文芸部恐るべし、と震撼したのですが、 この「花霞のゆめ」を読んで少し安心しました。 今回もいろいろな作品がありましたが、一番印象に残ったのは、 「海か化け物」です。 文章はこなれていない部分があるようでしたが、 やはりこういう作品は、テーマです。 どうしても書きたいことがある!というのがよくわかる迫力のある作品でした。

11月 4日 九州大学文芸部 Air Violin もしくは「オラ 手前ぇ金出せやクラァ」

一番印象に残ったのは、「顔に泥」でした。 特に何ということもないストーリーでしたが、 つまり、波瀾万丈にとんでいるわけでもなく、 誰かが死んだりするわけでもないのですが、 「文芸」という感じがして、読んでいて深いものがありました。 それから、「毛むくじゃら令嬢」は、舞台といい、話といい、 とても日本に住んでいたら考えつかない気がして、元本があるのか、気になりました。

11月 9日 九州大学文芸部 新入生文集 2006

これは、「新入生文集」とあるので、1年生の人の文章が主なのだと思いますが、 それだけに書き慣れていない感じが初々しいですね。 「緋色」は、作者のこれからの意気込みのようなものが伝わって、 こういうのが私は好きです。 「月のかけら」も押さえたストーリーがとても良かったです。 同じような設定の長い、波瀾万丈のメルヘンも時々ありますが、 こういう感じの短編も余韻がうまく残って好きです。

11月 16日 九州大学文芸部 初夏文集 入植のすすめ

今回頂いた文芸部の本の中では、ベスト盤を除いて、 最も素晴らしいと思ったものです。  特に、「鳥啼かざれば(二)」がすごかったです。 (二)とあるので、(一)があると思うのですが、頂いた中にはありません。 また機会があったら下さい。 とにかく、文章を書き慣れている人で、ぐいぐい引き込まれます。 題材も素晴らしいし、(三)も読みたいです。


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