2008年に読んだ本(物理以外、主に小説)


2002年以前に読んだ大江健三郎の小説
2003年と2004年に読んだ本
2005年に読んだ本
2006年に読んだ本
2007年に読んだ本
2つのスピカ
2月11日 瀬戸内寂聴 源氏物語巻五

源氏物語は面白い。 ストーリーは、今では陳腐なエピソードが多く、 あらすじだけ読んだらつまらなそうで、 しかも道徳的にどうかと思われる点も少なくない。 とりわけ、道徳と言うか、倫理的な問題は深刻だと思うが、 それでも面白いと思うのは文章のせいだろう。 ということは、紫式部よりも瀬戸内寂聴が偉いということか。 いずれにしろ、瀬戸内寂聴の傑作の一つである事には間違いない。

4月9日 瀬戸内寂聴 源氏物語巻六

何でも源氏物語が紫式部の日記に始めて記載されてから今年で1000年らしいです。 それで全国で様々な催し物がありますが、朝日新聞でも夕刊に連載が載っていました。 それを読んでいるうちに他の人の訳も読みたくなりました。 源氏物語は、不思議な小説で、読み進めるたびに感想がどんどん変わって行きます。 五巻で「紫式部よりも瀬戸内寂聴が偉い」などと分かったような事を書きましたが、 これはとんでもない本です。 六巻まで読んでようやくそのすごさが分かりました。 印象に残る登場人物や筋書きは、今まで読んだどんな長編にも及びません。 特に六巻はすごいです。 柏木という人がかわいそうでたまりません。

6月17日 瀬戸内寂聴 源氏物語巻七

ここまで読んで来た源氏物語の中で、やはり柏木の話が一番印象に残りました。 明石の君のお父さんや玉鬘の君の話等も捨てがたいけれども、 柏木の話しは、どんどん引き込まれます。

7月11日 九州大学文藝部 Divina Commedia

今までだったら、源氏物語の方が先に読み終わったので、 そちらを先に書いていましたが、この本はわざわざ頂いたものなので、 感想を先に書きます。 まず、このような素晴らしい本をいただいて御礼申し上げます。 ありがとうございました。 読んでいてとても楽しい時間が過ごせました。

「再会」は、54ページのこの手の本にしては長い小説で、 これだけのものを書くのはさぞ苦労されたなと思います。 それだけに読み応えがありましたが、 やはり最後に再会するところが夢中になるほど引き込まれました。 終わり方は、良い意味での若さを感じました。

詩は難しいですね。 私のような凡人は何百編も書いて詩と呼べるようなのはほんの数編しか出来ません。 この本に載せている詩を書いている方達は、やはり才能があるのでしょうね。 特に、「イチョウ」の最初の2行、「自我の護持」の最初の1行はすごいと思いました。

「自己言及」は、複雑な構成で面白かったです。 私も昔こういうのを考えた事があったのですが、良く出来ていると思いました。 この戦略で長編を書くとどうなるのでしょうね。

「或る階段話」は、今回の本である意味、私が最もすごいと思った作品です。 あらすじを言うとつまらないのに、実際に読むと迫力があると言うのは、 小説や漫画にもときどきありますが、 そう言うのは小説だったら、文章力というか、 表現の仕方がすごくうまくて成功しているのだと思います。 この作品がまさにそうで、 発想自身はありふれていると言えなくはないのですが、 読んで本当に怖かったです。

「昨日の今日」は、最後の部分は好きです。 最後の部分に比べれば、 前半はちょっとスピード感が足らないような気がしましたが、 それはむしろ好き嫌いでしょう。 前半の方が好きな人もいると思います。 前半の感じで徹底して行けば、 それはそれで何かすごいものが出来るかも知れません。

それから、これはこの本に納められているどの作品にも共通して、 言葉づかいが古いというか難しいと感じました。 わざとそういう風にしているのだと思いますが、どれもそう感じたので、 ちょっと不思議に思いました。 好みの似た人が集まったのでしょうか。 あまりうまく成功しているようには思えませんでしたが、 現代風な文体を使うよりももっとうまい手があるのかも知れません。

8月15日 瀬戸内寂聴 源氏物語巻八

寂聴も「源氏のしおり」で書いていますが、竹河は長い割に印象が薄くて、 やはり、宇治十帖の始まり橋姫からが俄然面白くなります。 八の宮と言う人物設定も面白いし、2人の姉妹に薫や匂宮など、 個性的で生き生きしています。 特に薫と匂宮は、幼少の頃から出ていましたが、 ここに来てどんな人かが分かってきました。 それにしても、源氏物語は古くから多くの人が研究していると思いますが、 私みたいな1回読んだだけのぺいぺいが 感想を書くのも恐れ多い気がしてきました。

9月5日 瀬戸内寂聴 源氏物語巻九

11月4日 瀬戸内寂聴 源氏物語巻十

12月11日 九州大学文藝部 Die Schriftstellerei

今回は4冊も頂きました。 どうもありがとうございました。 1冊ずつ紹介していきたいと思います。 まず、最初のは難しい名前の本です。 綴りを間違っていたらごめんなさい。

最初の作品は、「カノン」で本全体で63ページあるうち、23ページを占める長い小説です。 おそらくジャンルで言えば、ミステリーに分類されると思うのですが、 私は推理小説はあまり慣れていないこともあり、いくつか分らない点がありました。 でも、こういう小説は分らない所は分らないまま楽しむものだと思いました。

次が「くるくるサイクル」で、不思議な作品だと思いました。 こういう不思議な作品が時々混ざるので、九大文藝部は面白いんだと思います。 この不思議な感じを極めて下さい。

3番目が「天下をまわるもの」で、この本におさめられている4つの作品のうち最も完成度が高いと思いました。 良くまとまっています。 まとまりすぎて、少し印象に残らない感じがあるのですが、 本の中にはこういう作品は1つは必ず必要ですね。 また、作者にとっても完成度の高い作品をたくさん書く事がとても大事だと思います。

最後が「A Box of Intellect」で、これは感想を書くのも難しいです。 もっとも、私ごときが偉そうに感想を書いても、おそらく何の参考にもならないので、 というか、そもそも文藝部の人がこのページを読んでいるかどうかも分らないので、 書かなくても良いとは思うのですが、充分読書欲を満たす作品だったという事は言えます。 ですから、お礼は言いたいです。 ありがとうございました。


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