今までだったら、源氏物語の方が先に読み終わったので、
そちらを先に書いていましたが、この本はわざわざ頂いたものなので、
感想を先に書きます。
まず、このような素晴らしい本をいただいて御礼申し上げます。
ありがとうございました。
読んでいてとても楽しい時間が過ごせました。
「再会」は、54ページのこの手の本にしては長い小説で、
これだけのものを書くのはさぞ苦労されたなと思います。
それだけに読み応えがありましたが、
やはり最後に再会するところが夢中になるほど引き込まれました。
終わり方は、良い意味での若さを感じました。
詩は難しいですね。
私のような凡人は何百編も書いて詩と呼べるようなのはほんの数編しか出来ません。
この本に載せている詩を書いている方達は、やはり才能があるのでしょうね。
特に、「イチョウ」の最初の2行、「自我の護持」の最初の1行はすごいと思いました。
「自己言及」は、複雑な構成で面白かったです。
私も昔こういうのを考えた事があったのですが、良く出来ていると思いました。
この戦略で長編を書くとどうなるのでしょうね。
「或る階段話」は、今回の本である意味、私が最もすごいと思った作品です。
あらすじを言うとつまらないのに、実際に読むと迫力があると言うのは、
小説や漫画にもときどきありますが、
そう言うのは小説だったら、文章力というか、
表現の仕方がすごくうまくて成功しているのだと思います。
この作品がまさにそうで、
発想自身はありふれていると言えなくはないのですが、
読んで本当に怖かったです。
「昨日の今日」は、最後の部分は好きです。
最後の部分に比べれば、
前半はちょっとスピード感が足らないような気がしましたが、
それはむしろ好き嫌いでしょう。
前半の方が好きな人もいると思います。
前半の感じで徹底して行けば、
それはそれで何かすごいものが出来るかも知れません。
それから、これはこの本に納められているどの作品にも共通して、
言葉づかいが古いというか難しいと感じました。
わざとそういう風にしているのだと思いますが、どれもそう感じたので、
ちょっと不思議に思いました。
好みの似た人が集まったのでしょうか。
あまりうまく成功しているようには思えませんでしたが、
現代風な文体を使うよりももっとうまい手があるのかも知れません。